「あー……ごめん。椎名は知らないんだよ」

お祭りの二日後、今日は友哉の部屋にいた。約一年ぶりに入った部屋は相変わらず汚い。

あの日のことを乃愛に言ったら、友哉に訊いてみようと家に乗り込んで今に至る。

「なんで? ふたりが付き合ってたのなんか学年のほとんどが知ってるじゃん。友哉と仲いいならなおさら、知らないわけなくない?」

乃愛がまくし立てるように言いながら、部屋着のままベッドであぐらをかいている友哉に目を向ける。

「あれ、知らない? あいつ転校生だよ」

「え? そうなの?」

「そうそう。一年の……すげー中途半端な時期だったな。二月? 三月? ほんと終わり頃。とにかく俺とチナが別れたあとに、急に転校してきたんだよ。親の離婚らしいんだけど。まあ校舎違ったし知らねーか」

二年になった時はもうグループができ上がっていたから、一年の頃からずっと仲が良かったのだと思っていた。

友哉の言う通り、八クラスもあるうえに校舎が分かれているのだから一年経っても知らない子なんてたくさんいるし、椎名を見たことがないのも気にしたことがなかった。

友哉のことだって、公園で偶然出会わなかったらきっと存在すら知らないままだったと思う。

だけど言われてみれば、もともと仲が良かったなら、あたしが椎名を見たことないなんて不自然だ。

「転校してきた時すげー暗かったんだけどさ。ほら、あいつ運動神経抜群じゃん? 体育ん時にそれ見て、1on1とかしてソッコー仲良くなったの」

「……離婚って?」