なに怒ってんだあたし。静かな公園にあたしの無駄な怒りが響く。少し驚いたように目を丸くした椎名は、「ほんとすぐ怒るよな」と言いながら、ちょっとだけ、小さく笑った。
「似合ってるって言わなかったっけ」
「えっ? 言ってない! ……たぶん」
「そうだっけ? 似合うなーとは思ってた」
なんだそれ。あたしの一生分の勇気を返せ。
盛大なため息を吐くと、椎名は今にも頭上にハテナが浮かびそうな顔をして首をかしげた。
なんだ。思ってくれてたなら、もういいや。
椎名と話しているとひとりで暴走しちゃって、たまにすごく疲れる。
だけどたぶん、こういう暴走をしちゃうのも、笑った顔を見ただけで全部許せちゃうのも、椎名が大好きってことなのだと思う。
「ねえ椎名」
「なに?」
「椎名って今まで彼女いたことある?」
なんとなく気になった。相手の過去を知りたいとか、まだそんな深い意味じゃない。
あまりにも女の子の扱い方を知らないから、あったらびっくりするなってその程度。
「ないよ。チナが初彼女」
でしょうね。予想通りで少し可笑しくなる。
「今まで好きな子とかいたの?」
「いないよ。女苦手だし」
素直に嬉しかった。
女の子が苦手な椎名が、あたしのことを好きになってくれた。
それに椎名の初恋の相手があたしっていうことになるわけで、それが無性に嬉しい。
「あ、あたしもね、好きになったの椎名が初めて」
「え、そうなの?」
「うん」
「じゃあキスとかもしたことない?」
「え?」


