歩き進めるにつれて、夏祭りの音が遠くなっていく。
予想通り公園には誰もいない。会場からそんなに離れているわけじゃないのに、この公園は木で囲まれているから音が遮断されていて、思っていたより静かだった。
ベンチに並んで座る。やっぱり、少しだけ距離を置いて。
「椎名」
「なに?」
「あのね」
「うん」
ここへ来る途中もちょこちょこ話してはいたけれど、静かな空間に改めて座ると妙に緊張してしまう。
椎名のほうを見れないまま、今日一番聞きたかったことを、少し震える声で口にした。
「あたし、変? 今日……」
「なにが?」
「ゆ、浴衣……どう?」
一生分の勇気を振り絞ってやっと言えたのがそれだった。こんなアバウトすぎる訊き方じゃ、椎名は求めている答えをくれるはずがないとわかっているのに。
「どうって、いつもと違う」
ほら見ろ。
「へ、変?」
「変じゃないけど」
そうじゃなくて。いや、ストレートに訊けないあたしが悪いのだけど。
付き合って二ヶ月、椎名の扱いに多少は慣れてきたつもりでいる。
椎名は基本的にピンポイントで訊かなきゃわかってくれない。とにかく深読みしてくれない人だ。
やっぱりここはあたしが勇気を振り絞るべきなのか。だけど、たまには察してくれたっていいのに。
ねえねえ、可愛い? とか言える女の子が羨ましい。乃愛くらい可愛かったら、素直に言えるのになあ……。
「そうじゃなくて、似合うとか似合わないとか、そういうこと訊いてんのっ」


