付き合い始めてから二週間、夏休み目前。

彼氏になった友哉は、付き合う前の猛アタックを超えるほどあたしにべったりになった。

「チナ! 昨日なんで途中から返してこなかったんだよ!」

「寝ちゃったの! いちいちうるさいな!」

一組と八組じゃ校舎が違うのに、昼休みになるとわざわざあたしの教室まで来る。今日は文句という手土産を持って来たらしい友哉と教室の前の廊下に並んで座り、プチ喧嘩を繰り広げていた。

友哉は付き合い始めてから毎日毎日メッセージを何通も送りつけてきた。

あたしも時間がある時は返信するけれど、ご飯を食べたりお風呂に入ったり家族と話したりと自分の時間があるのだから、しつこいと発狂したくなるほどメッセージを送りつけてくる友哉に毎回すぐに返すのは少し無理がある。

「ご飯中にスマホ触ってたら没収されるの! 使いすぎたり成績下がったりしたら解約されるの!」

それがスマホを持たせてもらったあたしに対する親からの条件だ。

彼氏ができたら当たり前のように連絡を取り合うのだと予想していたとはいえ、さすがに限度がある。

「俺だってそうだけど、それよりチナと常に連絡取ってたいんだよ……」

昼休みの廊下はなかなかの人だかりができる。その中で恥ずかしげもなくあたしにくっついてしゅんと拗ねる友哉は、あたしからするとある意味すごい。あたしはシャイなんだろうか。

たった二週間で乃愛含めみんなこの光景を見慣れたらしく、また友哉が振られてる、なんて笑っている。

「わかったよ。ごめんな。俺も気を付けるけど……たまにはチナからも連絡してよ」

あたしの手を握ってうつむく友哉。まだそんなにあたしと身長が変わらない友哉の顔を覗くと、一重の丸い目で上目遣いをして、小さく「チナ大好きだよ」とささやいた。

しつこいと怒っていたあたしも、こんなに素直に言われると正直嬉しい。できるだけ返すからごめんねって言うと、友哉は満面の笑みで頷いた。