この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



盆踊りの曲に合わせて太鼓の音が聞こえる。オレンジから濃紺へと変わりゆく空を無数のライトが照らす。

駅前のお祭りはあたしたちの地元で一番大きいから、人で溢れ返っていた。

なんとか合流すると、立っている友哉の後ろにはベンチに座ってたこ焼きを頬張る椎名の姿。

ヤバイ、緊張する。

「浴衣だー! 似合う! ふたりともめっちゃ可愛い!」

友哉を筆頭に、みんなが嬉しい言葉を次々にくれる。「ありがとう」とにこにこする乃愛に、気が気じゃないあたし。

一番感想を言ってほしい相手は、たこ焼きを口に運んだ箸をくわえながら、ただきょとんとしていた。

恥ずかしくてつい目をそらす。

「椎名、ほら! チナちゃん可愛いな!」

「せっかく彼女が浴衣着てんだから、なんか言えよお前っ」

あたしが言いたい台詞を次々に言ってくれたみんなに心の中で感謝して、改めて椎名に目を向けた。

ちょっと、

「あー、うん。いつもと違う」

ちょっとだけ、椎名が笑った。

「お前な」と呆れる友哉。隣でくすくす笑う乃愛。真っ赤になってうつむくあたし。

そりゃあね、「可愛い」って言ってほしかったけど。椎名はいつも、一番言ってほしい言葉をくれないけど。

でも、笑った。すごく優しい顔で、少しだけ笑った。

それだけのことがものすごく嬉しくて、あたしのテンションは一気に最高潮に達した。