とにかくドキドキが半端じゃない。
ついさっき過去最高記録を叩き出したばかりの鼓動の速さは、この短時間で記録を更新し続けている。
心臓の周りを誰かが全力疾走でもしているみたいにドドドドドと振動が響いている。
もう爆発しそう。公園中に響き渡ってるんじゃないかってくらいうるさい。
告白って、こんなに緊張するんだ。
「なんか今日変な日だな」
椎名がこっちを向いた気がしてあたしも反射的に顔を上げると、目が合った椎名は小さく笑った。
笑った顔を見ただけで――なんだろう、胸の奥からなにかがじわじわと込み上げてくるような感覚。初めての感覚だ。
ああ、これが――
「……好き」
この公園は相変わらず誰もいない。休日の昼間はちらほらと親子連れがいるけれど、この時間にはみんな家に帰っている。
静かな公園に響いているのはあたしの鼓動じゃなく、風で葉が揺れる音だけ。
「え? 俺のこと好きなの?」
「今言ったじゃんっ」
どうしても椎名の前だと可愛くなれない。こんな言い方しちゃダメだってわかってるのに。
だけどあたしの全身全霊の勇気と(たぶんそれなりに)いい感じの雰囲気をぶち壊されたわけだから、今回ばかりは怒るなというほうが無理だ。
「そっか」
言いながら目線を上げて前髪をいじる。やっぱり癖なんだ。
「あの……椎名は?」
「なにが?」
そこはわかってよ。
「あたしのこと……好き?」
「うん。あれ、こないだ言わなかったっけ?」
「聞いてない」
「あれ? そうだっけ?」
椎名はやっぱり素直らしい。
できることなら爽やかな笑顔でも添えて「好きだよ」って言ってほしかったけれど、相手は椎名だ。これでじゅうぶんだと思おう。