すっかり薄暗くなった初夏の空。見慣れた小さな公園の前。

自転車を降りた位置から数歩進んで木に囲まれた入口から中を覗くと本当に椎名がいて、ベンチに座りながらつまらなそうにスマホをいじっていた。

ぱっと明かりが点いた外灯に照らされたその姿を見た瞬間、たぶん鼓動の速さは過去最高記録を叩き出したと思う。

もう一度大きく深呼吸をして――そんなことをしたところで無意味なのだけど、他に自分を落ち着かせる方法がわからない――公園に入った。

「……椎名」

少し離れたところから呼ぶと、椎名は顔を上げて「よ」と言った。

「……よ」

「俺よくわかんないんだけど。友哉に、とりあえずここにいろって言われてさ。ひとり?」

椎名が事情を知らないってことは、あたしから切り出さなきゃいけないわけだ。

大丈夫か、あたし。

「うん、ひとり」

「ふーん。とりあえず座れば?」

やっぱり深く訊いてこない椎名にうなずいてベンチに座る。少し離れて。

「みんな帰ったの? 今日は高橋一緒じゃないの?」

「みんなでどっかで待ってるって」

「待ってるって?」

あたしに鈍感だとか言ったくせに、椎名もじゅうぶん鈍感だと思う。

ふたりで話すのはあの日以来だし、ふたりきりにさせられたってことは、話すことなんかひとつしかないのに。

「あいつらどこにいんの? 行く?」

「いや、あのね、」

あたしがやるべきことはひとつだけ。わかっているのに言えない。