「つまりはね、さっさと〝好き〟って言えばいいんだよ」
そう言った乃愛はスマホを持って、なにやらメッセージを打ち始めた。
一瞬椎名かと思ったけれど、乃愛は椎名の連絡先を知らないから違う。
関係ないのかと気にせずいたら、乃愛が勢いよく立ち上がった。
「チナ、準備して。早く」
「え? なんで?」
時間を見るともう十八時で、出かけるにしては遅い時間だ。
「誰かに連絡してたの?」
わけがわからないままつられて準備を始める。
「友哉」
「友哉?」
「予想通り、椎名たちといるらしいから会いに行こ」
「ええっ⁉」
そういうことか。
急すぎて軽くパニック状態のあたしを無理やり連れて、乃愛がママチャリで全力失踪する。
しばらく走って着いた場所は、案の定たまり場の公園だった。
「チナ降りて」
「あ、はい」
「じゃ!」
素直に降りると、乃愛は片手を上げて警察官みたいにシャッと敬礼した。
いやいや、「じゃ!」の意味がわからない。
「どーゆうこと⁉」
「だから話しなって。椎名いるから」
「乃愛は⁉ てか友哉は⁉」
「うるさいな! 椎名だけここ連れて来てって友哉に頼んだのっ」
乃愛はあたしと違って行動派だ。いつもうじうじと悩みがちなあたしの背中を押してくれる。
だけど今回はいくらなんでも、あんまりにも急すぎる。
「心の準備くらいさせてよっ」
「だから! ごちゃごちゃうるさいってば! いいから早く行きなって! あたしは友哉たちとどっかにいるから、終わったら連絡してっ」
今度こそ本当に行ってしまった乃愛の背中を、ぽつんと立ち尽くしたまま見送った。