「連絡こない」
あれから一週間、六月に入ったばかりの日曜日。
あたしは今日もスマホを片手にうなだれていた。
「だから! すりゃいいじゃん!」
両想いだということが発覚して、てっきりあたしは付き合えたのだと思っていた。
それからも連絡はこなかったけど相手は椎名だし、学校で会ってもこれといった会話はしてないけど相手は椎名だし、とにかく相手は椎名だから、気にしないようにしていたのだけど。
「勘違い?」
「ひとり言? キモイよチナ……」
なにひとつ音沙汰がない。付き合えたと思っていたのは勘違いだったんだろうか。
「好きって言われたんじゃないの?」
呆れた乃愛が漫画を閉じてベッドから起き上がる。あの日のことを思い返してみた。
あれ?
「好きとは……言われて……ない……?」
「言ったんじゃないの?」
「言って……ない?」
「付き合おうとかは?」
「……ない?」
「……あんたらバカでしょ」
あたしにとって恋愛の師匠である乃愛は、盛大なため息を吐いた。
そういえばあたしが勝手に両想いだと思っただけで、あたしの気持ちは伝えていない。それじゃ付き合っていなくて当たり前だ。
それ以前に、もし付き合ったとしても椎名から連絡をくれたりするんだろうか。
「あたし、椎名のことよくわかんないんだけど……」
「あたしも椎名ばっかりはまったくわかんない。無表情すぎて全然読めないもん」
「だよね……」
椎名は無表情のうえに無口だ。質問したら答えが返ってくるだけ。それ以上の会話はあまりない。
「でもひとつだけわかることがある」
「なに⁉」
「椎名はたぶん、好きって言わなきゃチナの気持ちに気づかない」
「……同感」