七月の始まり。
昼間は外に立っているだけで汗をかいてしまうほど暑いとはいえ、夕方にもなれば涼しい風が吹いていて心地いい。
そんな中、あたしたちはずっと公園にいた。
開始十分ですっかり打ち解けた乃愛は、男の子たちと楽しそうに話している。人見知りのあたしは、おそらく引きつったにこにこで相槌を打つことしかできない。
「チナ、楽しくない?」
積極的に輪に入れずどぎまぎしているあたしに話しかけてきたのは友哉だった。気を使ってくれたのか、声のトーンを下げている。
みんなの中心的存在らしい友哉は、場を盛り上げようとみんなにバランスよく話を振ったりしていて、うまく輪に入れないあたしにもちゃんと間を見て話しかけてくれていた。
「ううん、別に」
そっけなく答えて、すぐに目をそらした。
……ちょっと感じ悪かったかな。
友哉は派手な外見からくる印象とは全然違って、知り合ってからたったの一時間でわかるほど明るくて優しくていい子だ。だけどあまり男の子が得意じゃないあたしはつい冷たく接してしまう。
最後までうまく打ち解けられなかったあたしは、みんながスマホを出してわいわいと連絡先を交換している輪にも入れない。むしろやっと解放されると少し安心した。
「チナも交換しよう」
そんなあたしに真新しいスマホを差し出してきたのは友哉だ。
え、あ、と歯切れの悪い返事(になっていない返事)をしつつ、慌ててスマホを出す。それをきっかけに他の男の子たちも訊いてくれて、なんとか円満に解散することができた。
気を使ってあたしにも声をかけてくれたのだと思ったら、その日すぐにきたメッセージの内容は、
【ひと目惚れした! 俺チナ好きだよ!】
だった。
それからはLINEや学校で猛アタックの日々。戸惑いながらも、いつも乃愛のオマケだと思っていたあたしに好意を持ってくれたことが嬉しかった。
そして一週間後。七月十日、友哉の誕生日。
「付き合って」ってニカッと笑った友哉に、「いいよ」って頷いた。