「まあ幼稚園の頃だけどね」

そういえば幼稚園の年少さんから小学校低学年くらいまで、乃愛はいつも春斗春斗ってついてまわっていた気がする。あたしもだけど。

「『のあ、はるととけっこんするー!』とか言ってたよあたし。チナも『じゃあチナのおねえちゃんになるんだね!』とか言ってたし」

「え、全然覚えてない」

そうか。そうだったのか。

初恋が長い時を経て実るなんて、結婚することになるなんて、なんだかすごい。

「ねえ、もしかして、乃愛の運命の人は春斗だったのかな。中学生の頃、運命の人探すって言ってたもんね」

「ちょっと。やめてほんと。運命の人って。中学生だったもんね。恥ずかしい。……実はあたしもそれちょっと思ったけど」

ずっとずっと、心から好きになれる人を探し続けていた乃愛。

その相手はこれから見つけるのだと思っていたのに(きっと乃愛もそう思っていただろうに)まさかもうとっくに出会っていたなんて、その相手が春斗だったなんて、人生なにが起こるかわからない。

「ご、ごめん……なんかキモイねあたし」

「そ、そんなことないよっ」

「ごめ、ごめん……ちょっと落ち着く」

大きく深呼吸をして二杯目のモヒートを一気に飲み干した乃愛は、遠慮がちに上目遣いで「いい?」と言った。

いいもなにも、あたしの答えは決まってる。

「春斗なら、絶対絶対、乃愛のこと幸せにしてくれるよ。妹のあたしが保証する。……乃愛は運命の人を見つけたんだね」

乃愛はいつものように「ブラコン」と笑うことはなく、もう一度「ありがとう」と言って頬を赤らめたまま微笑んだ。