「あたしね、チナに言わなきゃいけないことがある」
二十二歳の春先。最近お気に入りのカフェバーでモヒートを飲み干すと同時に、乃愛が強張った表情でそう言った。
成人して、学校を卒業して、社会人になって、こうしてお酒を酌み交わすようになった。
未だに胸を張って「あたしたちは大人です」とは言えないものの、いつの間にか、世間一般では〝大人〟と言われる年齢になってしまったのだ。
乃愛は専門学校を卒業してすぐに予定通り準くんと同棲を始めたものの、一年前くらいに別れてしまっていた。
「なに?」
乃愛の頬は少し赤らんでいる。乃愛はお酒が強いから、たったの一杯で酔うはずがない。つまり顔が赤いのはたぶんお酒のせいではない。
「あのね、実は春斗とよく会ってて」
ハルト?
ハルトって……。
「……あたしのお兄ちゃんの春斗?」
「そう、チナのお兄ちゃんの春斗」
「ん? うん」
「あ、あのね? あたし仕事終わるの遅いじゃん? で、春斗も遅いじゃん?」
美容師になった乃愛は、毎日朝から晩まで働き詰めだ。春斗は最近はあまり会っていないけれど、相変わらず激務に追われていると聞いてる。
「だからね、前々からたまーに、偶然会った時とか飲みに行ったりしてたのね? ほんとたまーにだけど」
「うん、それは知ってる」
「そ、そうだよね。言ったことあるよね。で、でね、半年くらい前から、なんかけっこう頻繁に、っていっても月に何回かだけど、飲みに行くようになってね?」
「うん?」


