言葉にならないそれらが胸の奥から膨れ上がってくる。比例するように、体温がじわじわと上昇していく。鏡を見なくたって顔が真っ赤になっていることがわかる。

平然と答える椎名に、今ならなんでも訊ける気がした。

「椎名はさ……彼女ほしいとか思う?」

「そりゃまあ」

「女の子に興味あるの?」

「いや、女は苦手だけど」

「だよね。女の子と全然しゃべんないもんね」

「お前には話しかけてんじゃん」

あたしの質問に一切返事を濁さないから、こんなにすらすら訊けるのだと思う。

もし一回でも訊き返されたりしたら、たぶんもう黙ってうつむくことしかできなくなると思う。

「……椎名ってさ」

「うん?」

「好きな子いる?」

自惚れじゃないと思った。だけどもちろん勘違いの可能性もあるから、少し遠回しに言った。

「うん。……え、気づいてなかったの?」

――あたしのこと好きなの?

ここに来てから初めて目が合った。

椎名は少し驚いた顔をしてから、口元を柔らかく緩ませた。

「お前鈍感なの?」

椎名がわかりにくいんだよ。メッセージはそっけないし、そもそも滅多にくれないし、くれても用件だけだし。今日だって呼んでくれたと思ったら話しかけてもくれないし、あんまり笑ってくれないし。名前も呼んでくれないし。

好きならもうちょっとわかりやすいアピールしてほしいなんて、あたしはわがままなんだろうか。

「でもお前彼氏いるもんな」

「え? いないよ? なん……」

あ。思い出した。

彼氏うんぬんの話をした時、あたしは最高潮に不機嫌で、ちゃんと否定しなかったのだ。

「そうなの? 別れたの?」