「まあでも、これからは最低でも連休は帰るよ。だから年に三回は会えるな」
「もっと会えるよ。あたしも会いに来るから」
もう待たない。
あたしはこれから大人になっていく。ちゃんと自分の足で立てるようになる。
甘えて守られているだけの自分はもう嫌だ。
あたしもちゃんと、悠聖を安心させられるような、たまには甘えてもらえるような人になりたい。
「あのさ、チィ。もし、ちょっといいなって思う男が現れたら、ひとつひとつ俺と比べてみて」
「ひとつひとつって?」
「どっちがかっこいいとか、どっちが優しいとか? そしたら総合点で絶対俺が勝つから」
「悠聖よりかっこよくて優しい人が現れちゃったらどうするの」
「縁起悪いこと言うな」
「冗談だよ。悠聖よりいい男なんかいないもんね」
「まあな。……万が一そんな奴が現れても、俺よりお前のこと好きになる奴なんか絶対いねーよ」
アウターの袖で、あたしの涙をぐしゃぐしゃと拭う。
やっと視界が晴れると、そこには悠聖の変わらない笑顔と、あの頃よりもずっと壮大で綺麗な夜景が広がっていた。
「絶対、三年で帰ってくるから。そしたらさ」
今なら待てるよ。今度こそ、何年でも信じて待てる。
その先に、悠聖との未来があるなら。
「絶対、幸せにするから。……結婚、しよっか」