悠聖に会う度に、きっと何度でも恋に落ちるのだと思う。
「あのさ、チィ。……三年。三年だけ待ってて。長いかもしんねえけど」
あの時、言ってほしかった言葉。
「俺、二十五になったら地元帰るって決めてたんだ」
「なんで二十五歳?」
「なんとなく。キリいいかなって」
「え、適当だね……。なんであの時教えてくれなかったの?」
「だってお前、そんなこと言ったら絶対待ってるって言ったろ」
悠聖の言う通りだ。
あの頃のあたしにとって七年は果てしなく長い。それでもきっと、待ってると答えていた。
けれど本当に、ちゃんと信じて待てただろうか。
不安に押しつぶされそうになりながら、早く帰ってきてほしいと願いながら、それを悠聖にぶつけて困らせてしまっていたかもしれない。
「そういえば、ずっと前だけど、紀子さんと望悠ちゃんに一回会ったんだよ。悠聖が全然帰ってこないって言ってた。そんなに忙しかったの?」
「忙しかったのもあるけど……今思えば、自信なかったんだろうな」
「自信?」
「チィに会いに行かない自信」
「……そうだったんだ。あたしも同じだったかも」
「なにが?」
「悠聖が帰ってきてるって知ったら、会いに行くの我慢できなかったと思う」
会いに行って、やっぱり別れたくないって泣いてすがって、悠聖が受け入れてくれたら、全然違う四年間になっていたと思う。
あんなに苦しい気持ちを味わうこともなく、幸せな時間が続いていたかもしれない。
だけど今は、一度離れてよかったと思える。
離れていたからこそ、いろんなことを経験した。いろんなことに気づけた。
悠聖と離れずにいたら、悠聖の本当の大切さも気づけないまま、悠聖にどっぷり甘えたまま──もしかしたら依存して過ごしていたかもしれない。