今よりもずっと子供だったあの頃、あたしは一度でも、心から悠聖の幸せを願ったことがあっただろうか。
あのまま一緒にいたら、今こうして自分の想いを自分で伝えようとしていただろうか。
「あたしの幸せには、悠聖が必要なの。あたしね、どうしても、悠聖が好きなの。ずっと一緒にいたい……」
一緒にいられることは当たり前なんかじゃない。
なんの努力もせずに、大切な人とずっと一緒にいられるわけじゃない。
ずっと平穏な日々が続いていくわけじゃない。
あたしはそんなことすら知らずに過ごしていた。
悠聖と離れなければ、こんな大切なことに気づけなかった。
「……俺さ。あんな別れ方して、あんだけ泣かせて、もうお前に会う資格ないとか、お前の幸せだけ願ってようとか、ずっと思ってた……ていうか、言い聞かせてたんだよ。そのうち忘れられると思ってたし、実際、もう大丈夫だって思ってたんだ。……なのに電話くれた時、なにも考えずに『待ってる』って答えてた。その日から他のことなんてなんにも考えらんねえくらい、どうにもなんねえくらい、チィに会いたかった」
「うん……」
「不思議だよな。ずっとチィのことだけ好きだったかって訊かれたら、正直……わかんねえけどさ。こうやって会っただけで……声聞いただけで、一瞬で気持ち全部持ってかれるんだよ。もしまた会えない期間あったとしても、こうして会ったら一瞬で好きになるんだろうなって思ったよ」
あたしだってそうだ。ずっと悠聖のことだけが好きだったわけじゃないと思う。
確かに陸のことを好きだった瞬間もあった。
けれど、もしもまた、離れてしまう時がきても。


