次第に、ぽっと明かりが灯ったように、ひとつのシーンで止まった。
「……一緒に初詣行ったこと、覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ」
「あの時ね、あたし……悠聖とずっと一緒にいられますようにって、お願いしてたの。……今でもね、その願いは変わってないの」
たとえ誕生日も好きな飲み物も将来の夢も忘れられていたとしても、カフェの前で悠聖の横顔を見た瞬間──ううん、電話で声を聴いた瞬間、あたしの中でかすかに残っていた迷いなんて消え去っていた。
ひと目見ただけで、一瞬にして引き戻される。吸い込まれていく。
全身が、悠聖を求めていた。全身が、悠聖のことが好きだと叫んでいた。
「悠聖が好き。好きなの……」
思い出話や他の言葉なんて、今のあたしには必要なかった。
伝えたいことは間違いなくそれだけだったのだから。
涙が流れても、勇気も決意も流れていかなかった。
溢れてきたのは、〝悠聖が好き〟という想いだけだった。
「ねえ、悠聖は? 悠聖は……初詣の時、なにをお願いしてたの?」
悠聖は教えてくれなかった。訊けばよかったとずっと後悔していた。
あの頃はまだ、いつでも話せると思っていた。これからいくらでも一緒にいられると信じていた。
「……チィが幸せになりますように、って。……今でも変わらないけどな」
悠聖はいつもそうだった。いつだってあたしのことを考えてくれていた。
あたしはそれが当たり前になっていて、悠聖に甘えきっていた。