「久しぶりだな」

目の前に立っている、四年ぶりに会った彼──悠聖は、変わらない穏やかな笑顔であたしを迎えてくれた。

午前中に家を出たというのに、待ち合わせ場所に着く頃には夕方になっていた。すぐそこにそびえ立っている東京タワーはライトアップされている。

会いに行くと電話をした時、空港まで迎えに行くと言ってくれた。それを断って、東京タワーの近くにあるカフェを待ち合わせ場所にした。

単純に行ってみたかったのと、他に思い浮かばなかったのと、人目につきすぎる場所を避けたかったからだ。

再会した瞬間に、公衆の面前で大号泣してしまったら困る。

てっきり店内で待ってくれているものだと思っていたのに、悠聖は右手に缶コーヒーを持って、左手をポケットに入れて、お店の横に立っていた。

白い息が、ふわふわとふたりの間をさまよっている。

「……うん、久しぶりだね。……来てくれてありがとう」

「こちらこそ。なんか大人になったな。もう二十歳か」

「正しくはあと一週間だけど」

こんな嫌味だけはさらりと出てくる自分に呆れてしまう。

「知ってるよ。三月十九日。……とりあえず、どうする? 腹減ってるなら店入る?」

「ううん。……あのね、あたし、東京タワー行ってみたくて」

「なんかそう言う気がしてた」

だから外で待ってくれてたのかな。まだまだ寒いのに。

目尻を下げて微笑んだ悠聖は、ぐいっと缶コーヒーを飲み干して、近くのゴミ箱に捨てた。

「じゃあ行くか」