決意が薄れてしまわないよう、翌日すぐに行動した。

時間が経ったらあたしはまた怖気づいて、うじうじと悩み始めてしまう恐れが大いにあったからだ。人間そんなに急速には成長できない。

「……もしもし。悠聖?」

呼び出し音がひとつふたつと増えていく度に、心臓が膨らんでいくように感じた。

そのせいで、絞り出した声は滑稽なほどに震えていた。

いつだったかな。椎名と付き合った頃だったかな。

あたしの鼓動の速さは過去最高記録を叩き出して、ほんの少しでも刺激が加われば爆発してしまうんじゃないかと思ったことがあった。

そして今、数年ぶりに記録を大更新した。もう二度と更新はしないだろうと思うほどに、思いっきり。

『──びっ……くりした。久しぶりだな。どうした?』

元気? とか。仕事どう? とか。……彼女いるの? とか。

訊きたいことはいろいろあった。山ほどあった。いや、世界一大きな山に例えても足りないくらいあった。

だけど今は訊かない。もしも悠聖が会ってくれたら、全部全部、その時に聞きたい。

「うん、あの……急なんだけど、ごめん……。ほんと急でびっくりさせちゃうと思うんだけど」

『なんだよ。気になるから早く言ってよ』

「ご、ごめん。あのね、……会いに行っても、いいかな」

ここで断られたらもう終わり。どんなに会いたくても諦める。ちゃんと現実を受け止める。

けれどもしも、もう一度会えたとしたら。会ってくれたとしたら──。

『──いいよ。待ってる』

ちゃんと目を見て、あたしの想いを全て伝える。

やっと見つけた、あたしなりの答えを──今、君に届けに行くよ。