非常階段に座り、小さくため息を吐いた。
あたし絶対おかしい。こんなことばかり考えちゃうなんてどうなんだろう。自意識過剰すぎる。あれはもう忘れよう。椎名はきっとなにも考えずに言ったんだ。なんの意味もない。
バカだあたし――
「なにしてんの?」
「わっ」
弾かれたように顔を上げると、そこにはあたしの頭を占領している張本人の姿。
「毎回びっくりさせないでよっ」
「なにが?」
「気配なさすぎるんだって!」
「そう?」
顔色ひとつ変えずにあたしの隣に座る。
その瞬間、全神経が右肩に集中した。
「椎名こそなにしに来たの?」
こういう言い方しかできないあたし、やっぱり可愛くない。
「ちょっと休憩」
「そっか」
「お前出てくの見えたから追いかけてきた」
「そっか……えっ?」
追いかけてきた? あたしを? あたしが出ていくの見えたから?
「なんで追いかけて……来てくれたの?」
右側に目を向けると、やっぱり椎名は前髪をいじっている。
「話したかったから」
なんだろうこれ。また深読みしてしまう。
「話したかったの? あたしと? なんで?」
「だって昨日会ってなかったじゃん」
会ってないのは当たり前だ。昨日は土曜日なんだから。
ああ、心の中まで可愛くない。嬉しいのに。
「……あたしに会いたかったの?」
「うん」
「だから今日呼んでくれたの?」
「うん。友哉に言ったら、たぶん高橋といるからふたりとも呼べって。あ、友哉は『乃愛』って言ってたけど」
その補足はいらないだろうと思いつつ、嬉しいやら恥ずかしいやら、いろんな感情が一気に湧いた。