「〝好き〟って、いつも思い出して、思い出したら声が聞きたくなって、声を聞いたら会いたくなるんでしょ?」
「……そう、だけど」
「チナちゃんは一回も信じてくれなかったけど、俺チナちゃんに会いたいってほんとに思ってたし、会えたら嬉しいし、別れたあとはまた会いたいなって思うよ。じゃなきゃこないだだって、あんな時間に急に呼び出されて迎えに行ったりしないから」
両手を握ったまま、あたしの目をまっすぐ見ていた。
「本気だから。信じて」
宗司くんが、あたしのことを好き?
そんなの信じられなかった。信じられるわけがなかった。
いや、今までのあたしなら、今までの宗司くんなら、そうだった。
最近の宗司くんは少しおかしかった。いつも意地悪ばかりのくせに、いや、意地悪なのはそこまで変わりなかったけど。
それ以上に、あたしを見る目がとても優しかったことに、少しだけ気づいていた。
──彼氏できたって聞いた時、正直すげえムカついちゃって。俺のことは全然相手にしなかったくせに、ぽっと出の男と急に付き合うのかよって。
──全部知ってて受け入れようとしてる俺は無視して、なにも知らない男に逃げんのかよとも思った。
──あの時の彼女のこと、最初に気になったのは名前が『ちな』だったからだし。
あれは全部、本当だったんだ。
そうだとしたら──少なくとも、高三の頃からあたしのことを好きでいてくれたんだ。
宗司くんの言い方からすると、宗司くん自身も最近まで自覚はなかったみたいだけど。
「……ごめんなさい」
考えて言ったわけじゃない。頭が混乱しすぎて、もう真っ白で、返事を考える余裕なんてないのだから。
それなのに、その言葉が口をついて出た。
「わりと即答だね。もうちょっと考えてくれてもいいんじゃない」
「ごめん。……でも、ごめんなさい」
「はは。初めてまともに振られた」
「……ごめん」
「まあわかってたからいいんだけど。……でも、思ってたよりけっこうキッツイな」
宗司くんは握った手を離して、窓の外を見てふっと笑った。
それはいつものにこにこじゃなく、本当に、少しだけ、傷ついているように見えた。


