この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



「うん」

「なんで? いつも歌ってるじゃん」

もうだいぶ時間が経ったかと思ってスマホを見ると、まだ一時間しか経っていなかった。歌わないと時間が経つのが遅いらしい。

「んー、なんとなく」

「あ、わかった。椎名いるから緊張してるんでしょ」

にやにやと意地悪く笑いながら耳打ちする乃愛。見破られるのは悔しいけれどその通りだった。

そんなわけないでしょと涼しい顔で鮮やかにスルーできるほどあたしの表情筋は器用じゃないし、図星を突かれても平静を保っていられるほど強靭なハートも持ち合わせていない。

あと唯一同じ女の子の乃愛がかなりうまいから、単に歌いにくいっていうのもある。あたしは歌が得意じゃないのだ。

「じゃあ一緒に歌おうよ」

「は⁉ それだけは絶対やだっ」

「は⁉ 超失礼なんだけどっ」

バレないようちらりと椎名に目を向けた。あたしと同じく歌ってはいないものの、みんなと話しながら無邪気に笑っている。

あんな笑顔、あたしには見せてくれない。椎名は友達と遊んでるほうが楽しいのかな。彼女ほしいとか思わないのかな。あたしのことは――。

――彼氏いなかったらよかったのに。

ダメだ。あたし自意識過剰。

少し頭を冷やそうと、残り少なくなったアイスココアを一気に飲み干してから盛り上がっている部屋をあとにした。