この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



宗司くんは車を発進させるどころかエンジンすらかけずに、ゆっくりとあたしを見た。

「チナちゃんさ」

ふう、と小さく息を吐いた宗司くんは、あたしの手をぎゅっと握った。

正真正銘のチャラ男であるはずの宗司くんにこうして触れられたのは、この瞬間が初めてだった。

「結婚しない?」

今日の中で一番、いや、間違いなく人生で一番驚いた。

結婚ってなんだっけ。

結婚。

……結婚?

「……な、なに言ってるの?」

「そのまんまだよ。俺と結婚しない?」

意味がわからない。いつもの冗談だろうか。

冗談にしても質が悪いし、くすりとも笑えない。

「……ず、ずいぶん唐突だね」

「だね。俺もちょっとびっくりしてる」

「そう、だよね。うん、びっくりだよね。あたしもすんごいびっくりしてる。……宗司くんって結婚願望あったの?」

たまには冗談に乗って頷いてみるか、いつも通り怒ってみるか少し悩んだ結果、頭に浮かんだ疑問をそのまま口にした。

「まったくないね。誰かと一緒に住むとか考えたことない」

「なにそれ」

「でも、チナちゃんとはずっと一緒にいられたらいいなって思うよ」

もっと意味がわからない。

あたしと、ずっと一緒に?

どういう意味、なんて考えるまでもないはずなのに、相手が宗司くんだとこんなにも混乱する。

「……いやいや、待って。ちょっと待って。だって宗司くん、ついさっきまで彼女いたよね? 今までだって何人も彼女いたよね?」

「だって勝手に女の子が言い寄ってきちゃうんだもん。告られるし」

断ればよくない?

やっぱり宗司くんってよくわからない。