なんて言えばいいのかわからなくて、「こんにちは」と小さく言って彼女さんの向かいに座った。
縮こまるあたしと、足と腕を組んであたしを睨みつけている彼女さん。
小心者のあたしは瞬時に怯んで、目を合わせられなくなってしまった。
「人の男に手え出してんじゃねぇよ」
なんだか最近、こういう怒りに満ちた声を聞いてばかりな気がする。
あたしはいったい、どれだけ人を怒らせてるんだろう。
「あの……ごめんなさい」
彼女はいないって聞いてました、なんて言えなかった。
あたしがなにを言っても言い訳にしか聞こえないだろうし、万が一信じてくれたとしても、彼氏がそんなことを言っていたなんて知ったら、あたしならものすごく傷つく。
それからも止まらない怒りを次々と口に出す彼女に、あたしは謝り続けることしかできなかった。
だって謝る以外にどうしたらいいのかわからない。
そんな時間がしばらく続いた頃、カフェのドアが音を立てて開いた。
「……なんでチナちゃんがいるの?」
あたしたちが座っている席の横まできた宗司くんは、大きな目を見開いて、彼女とあたしを交互に見る。
あたしもすぐには状況が把握できなくて、たぶん宗司くんと同じような顔をしていた。
「あたしが呼んだの。ふたりから話聞きたかったから。この女が嘘つくかもしれないし」
彼女さんは宗司くんを見上げて、隣の空いている椅子をトントンと叩く。
宗司くんはその合図に応えることなく、立ったまま眉根を寄せた。
「お前、なんで勝手にこんなことしてんの?」
宗司くん──怒ってる。