「チナちゃん昔から可愛かったけど、すげえ可愛くなったよ」
「それも下心?」
「これは素直に褒めてる」
「……ありがとう」
ドライヤーのスイッチを切ってテーブルに置くと、手ぐしであたしの髪をとかす。
後ろにいた宗司くんは隣に移動して、あたしの顔を覗き込んだ。
わかってる。家までついてきて、泊めてもらって、それだけで終わると思うほどもう子供じゃない。
「下心って、見え見えだとかっこ悪いね」
「もうじゅうぶん優しくしたから、いいかなって」
ついてきたらどうなるのかわかってる。前に宗司くんの家に行った時とは違うことも、ちゃんとわかってる。
あたしは、ゆっくりと近づいてくる顔から目をそらすことなく、そっと目を閉じた。
「──チナちゃんってさ。なんで今の彼氏と付き合ってんの?」
唇が重なることなく、宗司くんが言った。
閉じていた目をゆっくり開けると、宗司くんは末広二重の大きな目でまっすぐにあたしを捉えていた。
「……だから、さっき別れたってば」
「細かいな。なんで付き合ってたの?」
「……好きだからに決まってるでしょ」
「ふーん。好きってどういう気持ちなの?」
手を伸ばして、あたしの髪を弄ぶようにいじりながら、俺わかんないんだよね、とひとり言みたいにこぼした。
好きっていう、気持ちは。
「……いつも思い出して、思い出したら声が聞きたくなって、声を聞いたら会いたくなって」
「うん」
「好きって何回言っても足りなくて、むしろ言えば言うほどどんどん気持ちが溢れてきて」
「うん」
「一緒にいるだけで楽しくて、幸せで、優しくてあったかい気持ちになれて」
「チナちゃん」
未来を想像した時、必ず隣にいて──当たり前に〝永遠〟を信じられる。
「それ、誰のこと考えて言ってんの?」


