この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。




「とりあえずシャワー入る? 暗くて気づかなかったけど、顔ひっどいよ?」

宗司くんは、クローゼットからバスタオルとパジャマを出してあたしに差し出した。

「パジャマなんて着るんだ。なんか意外」

「俺は着ないよ。寝る時スウェットだし。それはもらい物」

「もらい物って……まさか元カノとか?」

「まあね」

悪びれもせずににっこりと笑う。

全然面白くないのに、発言は最低なのに、宗司くんのにこにこ顔を見ているとつられて笑ってしまうから不思議だ。これも女の子を惹きつける大きな理由なんだろうか。

返そうとしたあたしの手をつかんで「新品だし別にいいでしょ」と言ったから、伸ばした手を渋々引っ込めた。

「お湯溜めて一緒に入る?」

「一緒には入らないけど、お湯は溜めてほしい」

「意外とこき使うんだね」

呆れたように言いながらもバスルームへ向かった。

タオルとパジャマを抱えたままベッドの脇に座り、小さく深呼吸をした。

沸かしてくれた熱いお湯に浸かると、やっと芯から温まった体にほっとした。



「──チナちゃん、寝ちゃった?」

耳元で声が鳴る。うっすら目を開けると、スウェット姿の宗司くんがあたしの顔を覗き込んでいた。お風呂から上がって、気づけばベッドの上で眠ってしまっていたらしい。

学生時代からいつも綺麗にセットされていたブラウンの髪は、目の前でさらさらと揺れている。

初めて見た家での宗司くんは、スーツ姿の時よりも、もしかしたら高校生の頃よりも、ずっと幼く見えた。

「……なんか、ちょっと疲れちゃって」