アカウント名は、さすがにフルネームじゃないにしろあたしの名前だ。乃愛たちと撮った写真も何枚か載せてる。
つまり彼は、あたしの名前か顔を知っていた。
「……もしかして、元カノにあたしの名前教えたり、写真見せたりしたことあるの?」
陸は否定しなかった。というか、ただただ焦るだけだった。
それはあたしがネックレスと香水のことを言った時とまったく同じ反応で、だからこそ図星なのだと確信できた。
「……意味わかんない。最低。ほんっっっとに最低」
浮気相手に彼女の情報漏らすの? それってどういう状況?
ていうか元カノも元カノで、彼氏に浮気がバレてからも平気で続けるっておかしくない?
え、待って。そういえば彼は「三人で会った」と言っていた。
浮気相手の彼氏に会って、それでも切らなかったの? ふたりともどういう神経してんの?
ありえない。
全部全部、この二年間を全否定されたみたいだった。
「あたし、もう陸のこと信用できない。もう無理。……別れよう」
陸の言う通り、別れて二年以上経っても切れないような事情が本当にあったのだとしても、今からどれだけ言い訳をされたとしても、あたしはもう信じられないし絶対に許せない。
数秒の沈黙ののち、陸はもう一度、深い深いため息をついた。
「……あっそ。わかったよ。俺のこと信用できねえならもういいよ」
言いながら、陸はあたしに背中を向けてベッドに座った。
どうしてあたしが責められるんだろう。逆ギレしないでほしい。
意味がわからない。もうなにもわからないしわかりたくもない。
とりあえず、今この瞬間、あたしと陸が終わったことだけは確実だった。
立ち上がって、コートとバッグを手に取る。じゃあ、と言いかけた時、陸が口を開いた。
「だったら俺も訊くけど。お前こそ浮気してたんじゃねえの?」
目を尖らせてあたしを睨みつける。
これ以上混乱させないでほしい。
浮気? あたしが?
あたしはそんなことしてないし、疑われるようなこともした覚えはない。