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あれ以来椎名から連絡がくることはなく、あたしからすること(ができるわけ)もなく、なんの進展もないまま毎日が足早に過ぎていく。
「チナ、スマホ鳴ってるよ」
日曜日。なにをするわけでもなく乃愛と一緒にあたしの部屋でごろごろしていた時。
読んでいた漫画を閉じて画面を見ると、そこには【椎名】と表示されている。
町内会規模の百人一首大会なら優勝できそうな勢いで素早くスマホを取り、ドキドキしながら画面をタップした。
【今なにしてる?】
なんとも裏切らない、椎名らしく素っ気ないメッセージ。それでも嬉しいあたし。
「椎名からでしょ」
ドキッとした。
「……なんでわかるの?」
「顔赤い。にやけてる。キモいよチナ」
けらけらと笑う乃愛に「うるさい」と小声で弱気に返して返信する。
【乃愛とあたしの家にいるよ】
あたしも素っ気なく返した。張り切って返信して、喜んでると思われたら恥ずかしいし。
【ふたり?】
【そうだよ】
誘われる――?
【今からみんなでカラオケ行くんだけど来ない? 友哉とかもいるよ】
……そうだよね。みんなで、だよね。
当たり前のことにがっかりした。
「乃愛、椎名がみんなでカラオケ行くから来ないかって」
「いいけど、なにふてくされてんの」
「ふてくされてないっ」
「はいはい。じゃあお邪魔させていただきます」
「邪魔じゃないってば!」
ついにお腹を抱えて笑い出した乃愛に上着を投げて、あたしも上着を着て、ちゃっかりメイクを直して髪を整える。
もはやわざとあたしのことを焦らしているのではと疑ってしまうほどちんたらちんたら準備をする乃愛(という風に見えてしまうほどあたしの気持ちが逸っていることは否めない)を急かして、全力で自転車をこいだ。
だって会うの二日ぶりなんだ。早く会いたい。