この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



「……見たの?」

タオルで髪を拭きながらバスルームから出てきた陸は、無表情で座ったまま目も合わせないあたしと、あたしの前に置いてあるスマホを見てため息をついた。

ため息をつきたいのはあたしなのに。

「浮気、してたんだ」

「……してねえよ」

「でも、まだ元カノと会ってたことには変わりないじゃん。お金は振込にするって約束したんだから、会う必要ないよね」

変なの。うまく声が出ない。

「もう会わないって約束したのに。ていうかあたしより会ってない? 仕事忙しいって嘘だったの?」

「嘘じゃねえよ。あいつとは……金のこと以外にも、どうしても会わなきゃいけない時もあって……」

「ねえ、別れてもう二年以上経ってるよね? まだカタつかないの? ていうかまだお金返し終わらないの? どんだけ大金借りてたの? ……志保さん、また電話するねって言ってたよ」

あえて名前を出して目を合わせると、陸はさっと目をそらして眉間にしわを寄せた。

それもう、認めてるようなものじゃん……。

「元カノの彼氏に聞いたの。お前の男、俺の女と浮気してる、って」

「は? なんで……」

「おととい、SNSで急に電話きたの」

電話がきた時は動揺して、現実じゃないみたいだった。だけどなんとなく、混乱しながらも、聞かされた瞬間から彼の言ってることは本当だってわかっていた。

「浮気してる」と言った時の、電話でわかるくらい威圧的な低い声。「悪かったな」と言った時の、あたしを憐れむような声。

そもそも、会ったことすらないあたしにそんな嘘をつく理由なんてあるわけがない。

「……え?」

そうだ。

どうして彼は、会ったことすら──きっと存在すら知らなかっただろうあたしのアカウントがわかったんだろう。