陸から会えると連絡がきたのは、皮肉にも彼からの電話の翌日だった。

『全然時間作れなくてごめんな。明日迎えに行く』

電話の向こうで陸が笑う。

彼はあたしに電話したことを陸に言うんじゃないかと思っていたけれど、陸はなにも知らないみたいだった。

泊まりに行く約束をして、声を弾ませる陸に、あたしは「うん」としか返せなかった。

電話で訊こうかと思ったけれど、なんとなく、今じゃない気がした。ちゃんと目を見て話さなきゃいけないような気がした。

だから、明日陸が迎えに来てくれるのを大人しく待つことにした。

会ったら訊こうと思っていたのに、意気地なしのあたしはなかなか切り出せなかった。

陸はまた繁忙期に入るし、たぶん一ヶ月は会えなくなるから、今日はとことん楽しもうと少し離れた地域のデートスポットに連れていってくれた。

あたしの手を握って、楽しそうに笑って、時折あたしの頭を撫でてくれた。とても浮気しているようには見えなかった。

今のあたしたちはきっと、誰の目から見ても幸せそうなカップルだと思う。あの電話は夢だったんじゃないかと思うくらい、陸は優しかった。

夜ご飯を食べて陸の家に着く頃には二十一時を過ぎていて、ふたりでテレビを見ながら笑い合う。そろそろ風呂入るか、と立ち上がった陸を見送った。

そしてたったの数分後、あたしは目の前に置いてある陸のスマホの画面に釘づけになっていた。

一緒にいる時に陸のスマホが鳴るのはもちろん初めてじゃない。

普段なら気にも留めないのに、画面に表示されている名前が目に入った瞬間、放心せざるを得なくなってしまったのだ。