電話のあとにきたメッセージは「椎名です」ってひと言だけ。
学校が始まるまでの三日間、信じられないくらい、一日が五十時間になったのかと思うくらい長かった。
そしてついに迎えた登校日。
たったひと言だけのメッセージを何度も読んでしまうあたしは――
おはようって言うだけなのにドキドキしてるあたしは――
授業中、妙に右斜め後ろを意識してしまうあたしは――
「チナ、椎名に惚れたでしょ」
さすが幼稚園からの幼なじみであり唯一無二の親友だ。
なんでもお見通しの乃愛は、昼休みにさっそくあたしを教室の隅でも廊下でもなく裏庭へ連れ出した。
誰かに聞かれるわけにいかない話だと判断して気を使ってくれたらしい。
「なんでっ」
「見りゃわかるから。いったい連休中になにがあった?」
ぼっと火がついたみたいに瞬時に顔が火照り、火力は弱まるどころか徐々に増していく。おそらく(いや確実に)真っ赤になっている顔を隠すため、立てた両膝に顔を埋めて小さく丸まった。
なんだかとんでもなく恥ずかしい。
そのまま乃愛に会わなかった日の出来事を説明すると、乃愛はくすくすと笑った。
「なるほどねー。てかなんで昨日うち来た時に言わなかったの?」
「だって好きとかわかんないし……恥ずかしいし。電話くれただけで好きになるなんて、我ながら単純すぎて」
「好きになる時ってそんなもんだと思うよ。よかったね、チナの初恋だ」
立ち上がった乃愛に右手を差し出され、左手でそれを握って立ち上がった。
「おめでとう」と優しく微笑んだ乃愛は、幼い頃からずっと一緒にいるあたしでさえ未だに見とれてしまうほど綺麗な子だ。