それでも宗司くんはあまり会いたくない人だ。

「……よくそんな普通に話しかけてくるよね」

「相変わらず冷たいなあ。卒業してから全然会えなくて寂しかったんだよ」

嘘ばっかり。今度は大きなため息をこぼすと、宗司くんはにこにこしながら立ち上がり、あたしの隣に座った。

なんで笑ってるんだろう。なにも面白くなんかないのに。

「最後に会った日のこと忘れたの? 喧嘩別れした相手に、よくそんな普通に……」

「え、いつの話してんの? 卒業するちょっと前だったからもう一年くらい前だよね? 一年もずっと根に持ってたの? 執念深いな」

「そんなわけないじゃん! 喧嘩したことなんか……っていうか、宗司くんのことなんか忘れてたに決まってるでしょ!」

「喧嘩っていうか、チナちゃんが一方的に怒ってただけじゃん。俺のこと忘れてたならもうよくない? ついでにあんなのも忘れなって」

「……そう、だけど」

宗司くんもなかなか言い返してきてたし、けっこうイライラしてるように見えたんだけど。

「俺は別に怒ってないし、チナちゃんに会いたいと思ってたよ」

「嘘ばっかり」

宗司くん、変わらないな。やっぱり会いたくなかった。

なのにものすごく心細かったせいか、その変わらないにこにこに、今少しほっとしてる。

宗司くんは「とりあえず乗りなよ」とあたしの腕をつかんだ。

車内には宗司くんの香水の香りがした。……悠聖と、同じ香水の香り。

「ほんと、すげえ偶然だね。びっくりしたよ。なんでこんなとこにいるの?」

「彼氏の家がこの近くだから」

「彼氏って、あの時の? まだ続いてたの? どうせすぐ別れると思ってた」