あたしが幸せだと思っていた時も、陸は元カノと会ってたんだ。
あたし、ずっと嘘をつかれてたんだ。
付き合ってから、幸せだと感じていた間もずっと──。
……あれ?
ふいに、この状況とはまったく関係のない映像が脳裏に流れた。
まるで記憶の奥底に引っかかっていたものがふわりと浮上したみたいに。
ホワイトデーのお返しと誕生日の前倒しだと言って、香水とネックレスをくれたあの日。
──あたしのために選んでくれたんだよね?
──うん、まあ。
こんなに可愛いネックレスを陸が選んでくれたことが意外だと言ったら、陸はあたしから目を逸らした。
照れ隠しかと思ってたけど、もしかして……。
「あのネックレス……香水も、元カノと一緒に選んだの?」
陸は目を見張って、あの日と同じように目を逸らした。
「……否定、しないんだね」
あの時、本当に嬉しかったのに。幸せだったのに。
元カノから電話がきた時、あんなに怒っていたのに。だからこそ信じていたのに。
もしかしたら、あの怒りも演技だったんだろうか。
ショックだった。
感情の行き場がなくなったあたしは、バッグとスマホを持って、陸の家を飛び出した。