長々と言い訳をしてしまったけれど、つまるところ、間違いなくこれが決定打になったのだった。

あたしが自分の中に芽生え始めていた恋心を自覚する決定打に。

『友哉に番号と、LINEのIDも教えてもらった。あとでメッセージ送る』

「うん、わかった」

『あれ……風邪ひいた?』

「なんで?」

『なんか鼻声?』

鼻声は正解なのだけど、なんていうか。

つい一分前まで呼吸困難に陥りかけていたほど大号泣していたあたしの息は整いきれていないし、声も明らかに震えていた。

比べるのもおかしな話だけど、たとえば友哉なら泣いていることに気づいたと思う。

なのにそれを風邪だと解釈した椎名がちょっと可笑しくて――なんだろう、嬉しかった。

あたし、変かな。

「違うよ。電話だから声違って聞こえるんじゃない?」

少し笑った。椎名らしいなって。

『そっか』

「うん」

用事もないし話を続けようともしないなら、最初からメッセージくれたらよかったのに。

「あ、ねえ、なんで電話くれたの?」

特に意味はないことはわかっていた。でも、ただなんとなく聞きたくなった。

『ああ……文章打つの苦手だから。絵文字とかも使えねーし、スタンプもどれ使えばいいかわかんねーし。でも友哉に女の子相手にそれはダメだって言われて、とりあえず先に電話した。ちなみに電話も苦手だけど』

うん、そんな感じ。椎名らしい。

「そっか。変なこと言ってごめんね。じゃあまた学校でね」

椎名が苦手でよかった。メッセージだったらたぶん返せなかったし、こんなに早く気持ちが落ち着くこともなかったと思う。

椎名の声を聞いたら自然と落ち着けた。電話をくれたのが、今日でよかった。

もうすぐ、長い長いゴールデンウイークが終わる。