この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



今まではそんなこと気にならなかったのに。幸せなのに。疑いたくなんかないのに。

小さなしこりが急速に膨れ上がる。

──浮気、してるのかな。

「お前さ。……俺があげた香水つけてないよな。ネックレスも」

さりげなく(できる自信はなかったけれど)切り出そうとした時、あたしのただならぬ気迫を察知したかのようなタイミングで陸が言った。

意を決して攻めの態勢に入るつもりだったあたしのハートが、まさかの形勢逆転に驚いて、一瞬大きく跳ねてしゅんと萎んでいく。

「あ、えっと……実習とかあるし、香水とかアクセサリーとか禁止だから」

これは本当のこと。嘘はついていない。

だけど今この状況で、陸の質問に対する返事として、まったくもって正解じゃないことはわかってる。

「そっか。まあ、そうだよな」

明らかに納得していないことはわかっていた。だけどそれ以上にうまい言い訳は体中のどこを探しても見つからなかった。

見つかったのは、せめて陸と会う時だけでもつけて来るべきだった、という最低な言い訳だった。

香水をつけないのは、単純に香りがあまり得意じゃないから。

いつかは──陸のことをもっともっと大好きになれば──陸の好きな香りも好きになれると思っていた。

だけど趣味嗜好がそう簡単に変わることはなかったし、ネックレスはあたしの首元じゃなく部屋の片隅に飾られていた。