「付き合った時もすぐ報告受けたよ。まああたしが報告しろって言ったんだけど。もうすっっっごい嬉しそうで、あんな顔初めて見た。彼女見せてって言っても見せてくんないくせに、可愛い可愛いってうるさかったし」

「うん。チナちゃんと付き合ってから、ゆうほんと変わったよね」

あたし、なにもしてないのに。悠聖に甘えてばっかりだったのに。

悠聖が優しいからあたしも素直になれたし、悠聖が穏やかだからあたしも幸せを感じられた。

「あたしさ。どんどんいい方向に変わっていく悠ちゃん見ててね、……これが本気で人を好きになるってことなのかなあって、思ったんだ」

悠聖はいつも「チィのおかげだよ」と言ってくれていた。

あれはこういうことだったの?

あたしのために変わってくれた?

あたしがいたから変わってくれた?

悠聖に影響されていたのはあたしだと思っていたのに、悠聖も少しはあたしに影響されていたんだろうか。

やっぱり悠聖はずるい。

どうしてあの頃に教えてくれなかったんだろう。できることならもっと早く聞かせてほしかった。

「あの……悠聖って、帰ってきてるんですか?」

「一回も帰ってきてないよー。ママはたまには帰ってこいって言ってるみたいなんだけど」

「やっぱり帰ってきてないんだ。成人式も来なかったもんね」

悠聖は一度も帰ってきていない。

無意識にほっとしている自分がいた。

帰ってきても連絡はくれないんじゃないかと思っていたけれど、本当にそうだとしたら少しショックを受けるかもしれない。

だから春斗には訊けなかったし、春斗もあたしには言わないだろうと思っていた。

あたし、最低だ。あたしには陸がいるのに。

だけどこの気持ちがなんなのか、自分でもよくわからなかった。