「そういえばゆう一年の時、一回喧嘩で停学になってたよね」
「退学にならなかっただけマシだよ。てかあのまま過ごしてたら絶対退学になってたよね」
次々と出てくる悠聖の悪行。予想以上にすごかった話に、あたしはただただ唖然としていた。
「まだまだあるよ」と言った紀子さんに、もう大丈夫です、と小さく答えた。
「ね、とにかく最低だったの。ひっどいでしょ?」
本当に最低。客観的に聞いたらきっと「最っ低!」と便乗していた。
真実だとわかっているのに、どうしても受け入れられない。
あたしが知っている悠聖と違いすぎる。
「でもほんと変わったの。あたしね、一回悠ちゃんに相談されたことあるんだよ」
「相談?」
「うん。好きな女の子ができたんだけど、女の子ってどーゆうのが好きなの? って」
「……それって」
「高一の終わり頃だから、チナちゃんのことだよね?」
そんなの初めて聞いた。
悠聖がそんなことを相談するなんて想像つかない。
でも、そういえば──あたしのことを好きだと自覚した時はすごく悩んだと言っていた。
「あたしめっちゃびっくりして問い詰めたんだけど、全然教えてくんないの。とりあえず女の子はどーゆうことしたら喜んでくれるのかだけ教えろって」
「悠聖が、そんなこと……?」
「うん。信じらんないでしょ? あたしはその子のこと知らないからわかんないし、好きなら自分で考えろって言ったんだけど」
初めてデートをした時、なにをしたらあたしが喜ぶか必死に考えたと言っていた。
あたしが好きそうなことを考えて調べたと言ってくれた。
あたしのために、どれだけ悩んでくれたんだろう。