この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



もし隠れて同棲したとしても、バレたら大変なことになるんじゃないだろうか。

うちの親だって、いくら社会人だろうと陸の親の許可なしに同棲を許してくれるほど甘くはない。

「一緒に住みたくない?」

「住みたい……けど」

なにも考えずに済むのなら、陸と一緒に住みたい気持ちはある。

約束をしなくても毎日会えて、こうして会ったあとも「バイバイ」を言わなくてよくなるのだから、嫌なわけがない。

それに、確かにこのままだとずっとプチ遠距離だ。それどころか今よりもっと距離が離れる可能性だって十二分にある。

陸の会社は異動が多いからいつまで同じ店舗にいられるかわからないし、前いた店舗に戻ることは滅多にないと聞いた。

そう考えた時、さらなる懸念点が生まれてしまった。

陸が異動になる度にあたしも職場を辞めることになってしまう。せっかく採用してもらっても、とんでもない迷惑をかけることになるのだ。

考えれば考えるほど、現実的に無理な気がしてきた。そんなあたしとは裏腹に、陸は期待を含んだ目であたしをまっすぐ見ている。

「じゃあ決まりな。楽しみ」

嬉しそうに笑う陸を見ると、幸せだな、と思う。

こんな気持ちは本当に久しぶりだった。もしかしたらもう二度と味わえないんじゃないかと思ってた。

陸に告白された時に乃愛が背中を押してくれていなかったら、今こうして陸と一緒にはいなかったかもしれない。

そう思うと不思議なくらい、陸といることが、「千夏」と呼ばれることが、当たり前になりつつあった。

「うん。そうだね」

まだ残っているもやもやと本音を吐き出すことなく、笑って答えた。