短大に入学し、新生活が始まった。

課題や実習に追われる毎日。慣れないことばかりで大変だけれど、夢に向かって突き進む今の自分は嫌いじゃ……いや、正直に言うとけっこう好きだ。

陸は新しくオープンする店舗に異動になり、実家からだと通勤に一時間以上かかるようになったから、それを機に二ヶ月前からひとり暮らしを始めた。

そしてあっという間に、景色は緑から赤へと移り変わっていく。

「一緒に住まない?」

カフェでランチを食べ終えた陸が、嬉しそうににこにこしながら言った。

「一緒にって……」

「今の部屋じゃ狭いから引っ越してもいいし。一緒に住もうよ」

男の人は、彼女には入られたくないスペースがあると聞いたことがある。

けれど陸はこうしていつもあたしとの境界線をつくることなく、なんでも共有しようとしてくれる。ひとり暮らしを始めてすぐに合鍵もくれた。

嬉しいのに、陸が望んでいる返事を笑ってしたいのに、素直に喜べなかった。

気がかりなことがありすぎる。

「でも……あたしまだ学生だよ? お金もないし」

「金のことは心配しなくていいよ。俺が払うから。だって今のままじゃ全然会えねえじゃん」

陸の言う通り、あたしたちはすれ違いばかりだった。

陸が引っ越してプチ遠距離になってしまったし、さらに陸は開店準備に追われ、あたしも課題や実習に追われ、とにかくお互い忙しい。

今こうしてゆっくり会えるのも一ヶ月ぶり。

「うん……でも、学生のうちから同棲っていうのは……親もさすがに許してくれないと思うし」