彼氏の話なんて一切していないのに、なぜわかるのか。
春斗は昔からこういうところがあった。勘が鋭いというか。
「……できたけど」
「へえ。悠聖のことは吹っ切れたの?」
久しぶりに聞いた名前に動揺してしまったことは否定できない。
「……いつの話してんの」
宗司くんに「彼氏ができた」と言った時も、真っ先に悠聖の名前を出した。
どうしてみんなズケズケと聞いてくるんだろう。デリカシーってもんが……春斗にはないか。たぶん宗司くん以上に。
正直に言えば、吹っ切れたかなんてまだわからない。
陸のことは好きだし、悠聖を思い出すことは確実に減っていた。
でも、いつ、どのタイミングでなにを思えば「吹っ切れた」と自信を持って言えるんだろう。
名前を聞いて動揺してしまったあたしは、なんの迷いもなく「吹っ切れた」と言えるんだろうか。
答えないあたしを見て、春斗は深いため息を吐いた。
「やめとけ」
「ちょっと待ってよ。あたしそもそも悠聖のこと引きずってるなんて言った覚えない」
「お前バカか。見てりゃわかるんだよ。ナメんな小娘」
「そ、そうなの?」
見てるだけでわかっちゃうならどうしようもない。
だとしてもバカだの小娘だの言わないでほしい。
返す言葉が見つからないあたしは、また黙って最後のひと口を口に運んだ。
「別にお前がどこで男つくろうが勝手だけどな。昔の男忘れるために新しい男つくったって無駄だよ。それはやめとけ」
「だから、あたしそんなこと言ってない」
「バカかお前。俺は仮にも兄貴だぞ。お前の考えてることなんか手に取るようにわかるんだよ」
だったらあたしの気持ちもわかってよ。


