この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



翌日、春斗は服を買ってくれた。

二・三着だけかと思って必死に悩みながら選んでいると、ほしいなら全部買えよ、と言われた。驚いたあたしに「遊ぶ暇もねえから勝手に金持ちになるんだよ」と言った。

お言葉に甘えたあたしはどんどん試着をしてカゴに入れて、お会計で総額を見た時はつい謝ってしまった。だけど春斗はなんの反応もなく、平然と財布からお札を数枚出して支払を済ませた。

学生時代は常に「金がない」と嘆いていたのに、まるで別人みたいだった。

社会人ってすごいね、と言ってみると「俺がすごいんだ」と返されて、すぐに前言撤回した。

ご飯もご馳走してくれることになり、適当にお店に入った。

春斗とふたりでご飯を食べにきたのも初めてだ。お父さんもお母さんもお姉ちゃんもいない。

なんだか不思議な気分だった。

「春斗、ありがとう」

「あ?」

「今日すごい楽しかった」

お兄ちゃんにこんなことを言うのは恥ずかしいけれど、どうしてもちゃんとお礼を言いたかった。

服を買ってくれなくても、ご飯をご馳走してくれなくても、ただのドライブだけだったとしても。

あたしはきっと同じことを言ったと思う。

「給料日前にとんでもねー出費だったな」

「ごめんね」

「冗談だよ。金持ちだっつったろ。好きなだけ食え」

「うん。ありがとう」

服を買ってくれたことが嬉しいわけじゃない。ご飯をご馳走してくれたことが嬉しいわけじゃない。

あたしの誕生日を気にかけてくれたことが、特別なことをしようと考えてくれた気持ちが、純粋に嬉しかった。

「お前、男できただろ」

先に食べ終えた春斗が、黙々と食べ続けるあたしに言った。