「ちょ、乃愛! あたし無理だからっ」

「いいじゃん。せっかく中学入ったんだから新しい友達つくろーよ」

強引にあたしの腕を引いて、颯爽と男の子たちの輪に入っていく。

「見たことある! 何組だっけ?」

「ほんと? うちら一組だよ」

「マジ? 一番離れてんじゃん。俺ら八組」

乃愛はすごい。

ただでさえつい最近まで小学生だったとは思えないほどの大人っぽさと美少女っぷりが羨ましいのに、人見知りなんて知らない社交的な性格。

あたしにはとても真似できない。

「まあせっかくだし仲良くしよーぜ! 俺、佐伯(さえき)友哉(ともや)

「乃愛とチナだよ。あ、チナはあだ名ね。千夏(ちなつ)っていうの」

乃愛が自分とあたしを順番に指さしながら、目の前にいる男の子に笑顔を返す。

「乃愛ちゃんと、チナ?」

なんで乃愛は「ちゃん」付けであたしは呼び捨てなのよ。

多少もやっとしたものの、新たに知り合う男の子たちはだいたいみんな同じ反応だと思い直した。

超絶美少女の乃愛は「乃愛ちゃん」で、そのオマケみたいなあたしは「チナ」なのだ。

こんなのはもう慣れっこで、今さら突っ込むほどのことでもない。

「俺は友哉でいいから。よろしく!」

また人懐っこい笑顔でニカッと笑った彼の第一印象は完全なるヤンキーだ。

金髪だけでじゅうぶん派手なのに、着ているのはYシャツじゃなく指定外の赤いTシャツだし、ズボンは腰のあたりまで下げて履いていて、裾が地面についている。

やっぱり一番苦手なタイプ。