「え?」

「え? じゃねーよ。お前もうすぐ誕生日だろ」

春斗は枕元に置いていたスマホで時間を確認する。

「またしばらく来れねえから先に言っとく。誕生日おめでと」

「……それ言うために、帰ってきたの? ずっとあたしの部屋で待っててくれたの?」

「お前だって毎年俺の誕生日は俺が帰ってくるまで待ってただろ。去年は帰ってこれなかったけど」

不覚にも泣きそうだった。

春斗は毎年あたしの誕生日を覚えていてくれる。小さな頃からずっとそうなのに、当たり前のことなのに。

さっきの出来事で不安になっているせいか、いつもよりずっと嬉しかった。

「……ありがとう」

「どうしたんだよお前。なんかあったの?」

「なんでもない」

「あっそ。俺明日休みだから出かけるぞ」

「え? なんで?」

「誕生日プレゼント買いに。あと卒業祝いも」

「えっ」

プレゼントなんてもらったことがあっただろうか。

「おめでとう」は必ず言ってくれるし、ケーキを買ってもらったりしたことはある。だけどプレゼントらしいプレゼントをもらったことはないと思う。

「なんだよ。いらねーならいいけど」

「ほ、ほしいっ」

「だろうな」

春斗はもう一度大きなあくびをして、あたしの部屋から出ていった。