この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



「あー……わり。なんか俺の荷物にあいつの私物混ざってると思うから返せって」

「いいの? 返したら電話こなくなるんじゃ……」

「いいよ。めんどくせえし、ただの口実だろ。もし本当で返したとしても、どうせまた違う口実つくって電話くるから」

元カノはそんなに陸のことが好きだったんだ。

今は彼女がいること知らないのかな。知ってるのに電話してくるのかな。

わからないけど、どっちにしろあたしめちゃくちゃ恨まれそう。

「ごめんな、せっかく一緒にいんのに。電源切るわ」

投げたスマホを拾って電源を切ると、今度はポケットに入れた。そしてベッドに座ったまま動揺を隠せずにいるあたしをそっと抱き締めた。

さっきまで大声を出していた人とは別人みたいに優しい顔で、優しい手で。

「ほんとごめんな、不安になったよな」

「ううん、大丈夫」

コートを着て鞄を持ったタイミングで、ドアの向こうから階段をのぼる足音が聞こえてきた。

近づいてくるその足音はドアの前で止まり、ドンドンと、ノックにしては強烈な音が響いた。

驚いて、反射的に体が大きく跳ねてしまう。

「陸、ちょっと来て」

お母さん……だよね?

お母さんの声を聞いたのは初めてなのに、それでもわかるくらい、声には怒りが含まれていた。穏やかな話じゃないことは容易に想像できる。

「あーもう、めんどくせえな。……ごめん、ちょっと待ってて」

ドア越しに「行くから」と言うと、お母さんの足音が遠のいていく。陸は部屋の前からお母さんがいなくなったのを確認してからドアを開けて、階段をおりていった。

……なんだろう、どうしたんだろう。