この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



恥ずかしいのか、陸はあたしからさっと目を逸らした。

胸がきゅうっと締め付けられて、上半身を翻して陸に抱きついた。

隣に寝転びながら、なんでもない話をする時間が好き。陸は甘えられるのが好きだと言って、必ず腕枕をしてくれた。

たくさん話して二十一時を過ぎた頃、そろそろ帰ろうかと起き上がる。部屋の電気がつくよりも少し早く、暗い部屋にパッと小さな明かりが灯った。陸のスマホだ。

画面には女の子の名前が表示されていた。

「陸、電話だよ」

「あー……いいよ。ほっといて」

画面を一瞥だけして、床に落ちている服を手に取っていく。それを着ると同時に着信は止まったけれど、すぐにまた鳴りはじめた。

すぐにわかった。元カノだって。

ほとんど直感なのだけど、付き合う前に、元カノから鬼電がきていたことを思い出したのだ。

付き合い始めてからはすっかり忘れていたし、未だにきてるとは思っていなかったけれど。

「しつけえな」

何度も何度もくる電話。陸は明らかにイライラしていた。

「陸、電話出ていいよ。……元カノ、だよね? 急用かもしれないし、あたしは気にしないから」

戸惑いながらあたしとスマホを交互に見て、「わり」と小さくつぶやいた陸は、鳴り続けるスマホを手に取った。

「お前しつこい!」

電話に出るなり大声を上げた陸にあたしが怯んでしまう。

陸が怒ったところを見たのは初めてだし、あたしは人が怒ったり怒鳴ったりするのが苦手だ。

電話口からは女の人の怒鳴り声がかすかに漏れている。

「無理」

「知らねーよ!」

「いい加減にしろよ!」

そう吐き捨てておそらく一方的に電話を切った陸は、布団にスマホを投げた。

「……陸」