全員が無事に受験を終え、見事に第一志望に合格した。
瑞穂は隣市の大学。そして梓は、道外の国立大。友哉とは遠距離になってしまう。
別れを惜しむように、それぞれの新生活が始まるまであたしたちは頻繁に会っていた。
「ねね、もうすぐホワイトデーじゃん! みんな彼氏になんかおねだりした?」
乃愛は準くんの猛アプローチに「タイプじゃない」と断っていたけれど、なんだかんだで根負けして付き合い始めて、瑞穂も同じ大学に進学するらしい違うクラスの男の子といい雰囲気だ。
そのおかげで最近は恋愛話ばかりしている。
「あたしは別に。大学生だしね。あんまりわがまま言えないかな」
「そっかあ。チナは? 陸くん社会人だし、チナの誕生日もあるし、期待していいんじゃない?」
「んー、ホワイトデーは休みらしいから会う約束してるけど、わかんない。あたしもバレンタインは市販のチョコしかあげてないし」
三月になると陸の仕事が繁忙期を終え、あたしも高校を卒業して暇になったおかげで週に一度は会えるようになっていた。
「でもさ。陸くん優しいんでしょ? なんか考えてくれてるかもね!」
興奮している瑞穂が、「社会人の彼氏いいなあ」とキラキラした目でなぜか拝むように両手を合わせた。
陸は言葉遣いや仕草は雑なのだけど、意外とマメで優しかった。
陸の家に行く時、バスで行けるのに必ず車で送り迎えをしてくれる。一緒にいる時はいつも楽しく過ごさせてくれる。
陸と付き合って本当によかったと思ってる。久しぶりの恋愛ということもあってそれなりに浮かれていた。
……のだけど。
そんなあたしに誰かが人生をナメるなとでも言いたいのか、早くも大きな試練が訪れたのだった。