「俺がわざとやってるとでも言いたいの? チナちゃんってけっこう自意識過剰なんだね」
カアッと体が熱くなる。
宗司くんの言う通りだ。
あたしと同じ名前の子と付き合って「チィちゃん」と呼んでいることを知った時、宗司くんだけは絶対に嫌だと言ったあたしへの当てつけかと思ったことは否定できない。
だけどそれって、彼女に対してものすごく失礼だ。
最低なのは──あたしも同じだ。
「まあ、忘れられるといいね」
痛いところを突いてきて、あたしは傷口をナイフでえぐられたみたいに痛くて痛くて仕方がないのに、宗司くんはまるで哀れんでいるような目で笑った。
鞄を持って立ち上がり、返事をせずに屋上をあとにした。
──忘れられるといいね。
そんなこと、宗司くんに言われる筋合いないのに。
確かに付き合うと決めた時は、胸を張って陸のことを好きになったと言える状態じゃなかった。
だからといって誰でもよかったわけじゃない。
陸ならきっと好きになれると思った。
誰に告白されてもまったく動かなかった心が、陸には確かに反応したんだ。