できるだけ平然と言ってみせると、意外にも宗司くんは目を丸くしてこっちを向いた。
「……なんでそんなに驚くの?」
「だって、悠聖くんは? もういいの?」
訊きたくなるのも無理はないけど、宗司くんに訊かれる筋合いはないと思う。それに少しは気を使ってほしい。
「……もう別れて二年近く経つんだよ。未だに引きずってるわけないでしょ」
これはあたしの下手な嘘。
別れて二年近く経つのに、まだ未練たらたらで重い女だと思われたくないのと、まだ引きずっているのに彼氏を作ったのかと思われたくないのと。
そんなあたしの意地を見透かすように、宗司くんが嘲るように唇の端を上げた。
「そっか」
「……なんで笑ってるの?」
「いや別に。もういいなら、俺でもよかったじゃん」
その言い方、まるで「誰でもいいなら」って言われているみたいだ。そう言いたいんだろうけど。
「彼女いるくせにそういうこと──」
「ネクタイ、つけてるんだね」
宗司くんは人差し指で自分のネクタイをとんとんと突いた。
「え?」
「一年の頃はリボンだったのに、二年になってからはずっとネクタイだよね」
そんなところ気づかなくてもいいのに。本当に、触れられたくないところにズカズカ入り込んでくる人だな。
確かにあたしは一年生の頃ずっとリボンをつけていたけれど、うちの高校は、女子はリボンとネクタイの両方が配布される。
だから変じゃないし、瑞穂や梓だってネクタイ派だ。
「別に、リボンでもネクタイでも自由なんだからいいじゃん」
「でもそれ、男子用のネクタイだよね?」