宗司くんに会ったのは一月の終わり頃。

宗司くんの家に行った日以来さりげなく避けていて、同じ学年とはいえ文系クラスと理系クラスはほとんど接点がなく、さらに生徒数が多いおかげでまあまあうまく逃げられていたのだけど。

たまに会っても乃愛たちが近くにいたから、ちゃんと話すことはなかったのだけど。

もうすぐ卒業か、なんて感傷に浸りたくなって、なんとなく最後に屋上に来てみたら見事に遭遇してしまったのだった。

「やっほー」

ドアを開けた瞬間にしくじったのだと気づいた。視界の左下には壁に寄りかかって座っている宗司くんの姿。

こんな真冬に、まさかあたし以外にも屋上に行こうなんてもの好きがいると思わなかった。完全なる誤算だ。

観念して「こんにちは」とだけ返す。少し歩き進めて、奥のフェンスの前に少し離れて座った。

……のに、宗司くんはにこにこしながらついてきて、その隙間を埋めた。

「チナちゃんここ来るんじゃないかと思って待ってたんだよ。よかった、会えて。もうすぐ卒業だから会えなくなるもんね」

そう、だからもう会えなくなるまで逃げ切るつもりだったんだけど。

偶然なら仕方ないと思ったのに、まさか計画的犯行だったとは。

まんまと罠に引っかかるあたしはバカだ。いや、罠なんてかけられてないのだけど。

「寂しいな」

「嘘つき」

「ほんとだよ」

「彼女いるじゃん。一年生の」

秋頃から、宗司くんが一年生の女の子と付き合っていると噂が流れていた。

一度だけ彼女と一緒にいる時に会ったことがあって、ご丁寧に紹介もしてくれたから顔も名前も知っている。

「あたしも彼氏できたから」