この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



「でもそれって、最初からそうだったわけじゃないと思うんだよね」

確かにそうだ。最初からあんなに大好きだったわけじゃない。

「付き合う前でも付き合ってからでも、一緒にいるうちに、どんどん〝好き〟って気持ちが大きくなっていくんだと思うのね」

悠聖と付き合ってから、頭を撫でられる度に、笑顔を見る度に、優しさに触れる度に、どんどん好きになっていったのだと思う。

「あたしはね、今まで好きになった人のこと考えたら、最初はなんとなく付き合ってたんだよね。仲良くなって、向こうがあたしに気あるのわかって、別にいいかなあって」

あたしもそうだった。最初は告白されたり自分に好意を抱いてくれていることがなんとなくわかったり、それから意識し始めて付き合うことばかりだった。

最初はそんな始まり方だったけど──それから、椎名のことも悠聖のことも、どんどん大好きになっていった。

「だからね、今あたしがしてることってあんまりいいことではないってわかってるけどさ。もしかしたら好きになれるかもって、一応そう思える人と付き合ってるの」

「……うん」

「そんなに深く考える必要ないと思うんだ。この人いいなあって思えたら、最初はそこから始めてもいいんじゃないかなって思う。すごい好きな人と別れたあとって、それ以上に好きになれる人を探しちゃう気がするんだけど……最初から越えられるわけないんじゃないかなあ。決めるのはもちろんチナだけど、あたしは、いい人そうだし、好きになれるかもしれないから付き合ってみるっていうのもアリだと思うよ」

「付き合ってみる?」